エジプト日記:悪徳ラクダ引き

昨日記憶を頼りにエジプト日記を公開したが、当時エジプトで書いたものが出てきたので、公開します。昨日のとは少し内容が違うところもあるけどお許しを・・・
***************************************
9月1日 悪徳ラクダ弾き
ギザ、テーベのピラミッド見学。
朝9時。仲介をした旅行代理店の前でチャーターしていた運転手と落ち合う。
155LP(一万五千円程度)と(ピラミッド拝観料を抜く)通常より高めであるが、
移動の効率を考えると、背に腹は変えられない。
運転手は大変フレンドリーであったが、こうして二人で
遺跡に向かっていると、3年前のアンコールワットを思い出す。
カンボジアでも運転手をチャーターして、遺跡見学をしたが、
何かとぼったくろうとする彼と、喧嘩しながら遺跡を見学したという苦い思い出だ。
私も感じよく話すが、油断はならない。
 
市内から20分ほど走ると、最初の見学地、ギザの巨大なピラミッドが見えてくる。
「ああ、なるほどこれが・・・」と感心していると。
運転手が、駐車場に車を止め、小さなオフィスに私を連れて行った。
戸を閉めるとそこは薄暗い。
置くから一人の男が出てきて、木製のボードをさしながら、ピラミッドの説明。
「本日はマウンテンまで上るビックツアーと、ピラミッドとスフィンクスだけの
ショートツアーがあるがどちらが良い」との質問。
そりゃビックツアーがいいので、そう答える。
「Okでは、ラクダと馬、どちらが良い?」と聞かれた。
ラクダ」と、とりあえず答えた
「わかりました。では、ラクダと拝観料、合計で280ポンド(約US50ドル)です」
 
280ポンド...?
 
一瞬思考がとまる。早速これだ。カンボジアでもそうだが、
一般的に欧米人に比べ財布の紐が緩いとされる日本人は、いいカモなのだ。
「はぁ?あのねえ、ドライバーチャーターの他に拝観料が全部で15-20ドルって
聞いてたけど、何で最初のギザの時点で、そんなに取られなきゃなんないのよ?
ふざけたこと言ってんじゃないわよ」私は強気で言った。
ドライバーは予期せぬ事態に、うろたえている。
しかしこのガイドの男、落ち着き払った表情で、
「でもここからは徒歩ではピラミッドには行けないよ」と勝ち誇ったように言う。
 
結局それかよ・・・
世界のすばらしい遺跡もこういう連中によって、楽しみも半減である。
イスラム圏の人間が、女性に無礼な行為はしないだろうと
足元も見ていたため、暫く一歩も譲らず、言い争いっていた。
が、とりあえず、こんな所で争ってないで、さっさとピラミッドだけでも拝観したい私。
クレジットで後払いすると言って、後で支払いを止めることを目論んだ。
 
男は「お金は終わったあともらうから、まずはツアーを楽しんでください。」
と言って一人の男を連れてきた。
「そして彼が、君のラクダ引きを担当する男。あなた怒っているようだけど
彼を殺さないでね」と勤めて明るく言った。
紹介された男はグラサンにアルマーニのマークがプリントされた布をブラウスに縫い付けた、
レニー・クラビッツ・モドギの悲しい外見の兄ちゃんだった。
更に私はブルーになる。
 
ラクダは背も高く、ゆれも激しいため、今にも落ちそうだ。
足もかなり疲れる。
エジプトのラクダ引きといえば、客を降ろさず、そのために法外な
値段を要求するなど、かなり評判が悪い。
しかし、私の運動神経だとこのぐらいの高さなら、余裕で飛び降りられそうである。
私は最悪の事態も覚悟していた。
 
…しかし最悪の事態はまったく違った形で起こった。
入り口でラクダ引きにもらった拝観料を支払い
(こういった形で信用させようとしているのだ)、再びラクダに乗った私。
と、ここで男もすかさずラクダに乗り込んできたのだった。
狭いラクダの背で、かなり密着状態になる。
さらにラクダを走らせたため、かなり揺れに揺れまくり、今にも
振り落とされそうになったのだった。
男は「俺の腰に手を伸ばせ」と抱きつかせようとする。
悔しくて泣きそうになるが、このままでは、落ちそうだった。
私は男の服にしがみつき、落馬の恐怖に怯えるという
なんとも悲しい境遇に晒されていた…
 
一つ目のピラミッド内見学のため、ラクダを降りた。
すでに生きた心地がしない。
男は私に拝観料を渡し、ピラミッド内はカメラの持込は禁止の為預かっておいてやると申し出た。
しかしこれ。パターンその①
こうしてカメラを人質(?)にラクダから降ろさない、ということも
多発しているらしい(注:地球の歩き方参照)
その手には乗らないぜ・・・
「良いわよ、入り口で預かってくれるはずよ」
と私ははき捨てるように言った。
 
ピラミッド内のことは、既にあまり印象に無い。
再びラクダに乗ると、男も乗り込もうとする。
「ちょっと、あなたは歩いてくんない?」とさすがに私は拒んだ。
男は「疲れているから、馬を雇いたいが金が無いんだ」と同情を引こうとする。
ラクダ引いて歩くのが、あんたの仕事。」と言って私はその手にも乗らない。
すると男「じゃあこれから馬を呼ぶ電話をかけるが、馬を連れてくるまで
かなり時間が…」などとごねだした。
暑さでつかれきっていた私はうんざりし、
「どうでも良いから、もうさっさと出発して」とこの男の思うがままに
なっていだのだった…
ラクダの背中で男は、聞いてもいないピラミッドの
歴史やらの説明ガイドを始め、何度も腰に手を回すよう言う
私は断り続け、なるべく体を離す。

一通り説明が終わると、私はどういう訳か、
「あなたはエジプトに住んでることや、今の生活には幸せを感じているの・」
と、急にやさしい口調で聞いた。
さっきまでハイテンションだった男も急に静かになり
「いや、できるなら逃げ出したい」と悲しそうに言った
「逃げるって何処に・」と私は聞いた
「たとえば日本とか。今よりは良いんじゃないかな」
「日本には日本のつらさがあるわよ」
「でも、こことは違うだろ・どこか外国とかに行ってみたい」と言った
ニュージーランドとか、前写真で見たけどすごく綺麗だったし、人も良いって聞いた。」
「エジプトも綺麗だと思うけど・・・」
「そうだけど一生ここにいなきゃいけないと思うと、退屈で」
そんな話をしていると、男はガイドを止め、後は寂しそうに歌を口ずさんでいた。
 
短い拝観が終わると、先ほどのオフィスに戻ることになった。
するとラクダ引きは「ボスに支払いをして、その後俺にもガイド料だ」
と言い出した。何であんたに払わなきゃなんないのよ。
当然私は返事せず。
オフィス近くになると、彼はラクダをしゃがませ、自分だけ降りた。
やはり何か疾しいのだろう。
私の怒りのボルテージは再び上昇し始めた。
 
オフィスに戻ると早速請求が始まった。
私はクレジットでと言うと、車でホテルまで連れて行かれる。
キャッシャーはそっちで無いのか?と思いきや、ホテル内の銀行で、
キャッシングをする用強要してきたのだった。
小さなキャシング機の前で男たちに塞がれて、かなり高圧的な雰囲気だ。
同然、利子も高いため私は断り、大喧嘩になる。
しかしこのままでは帰れない。
半場無理やり、TCを両替させられ、支払いをさせられた。
私はすかさず領収証を請求した。
今は引き下がっても、後で倍返しにしてやると思った。
オフィスで領収証を受け取ると、わけの判らんランプ屋に連れ、買い物させようとした。
当然断る。
 
ここで、ラクダ引きがしつこく、ガイド料を請求してきた。
何だって280ポンド以上に、触られ料を払わなきゃならないんだ・・・
二人に「ふざけるな」の汚い一言を残しガイドと車に乗り込んだ。
 
再びドライバーと社内に戻ったが、車内はかなり気まずい不陰気。
ガイドは勤めて明るく私の機嫌を取ろうとする。
見たところかなり小心者だ。
パピルス店(エジプトの絵画)に連れて行き、再び土産を買わせようとするが、
「偽物見せてんじゃないわよ」冷酷に言って放つ。
かなりやばいムード。
 
その後レストランに連れて行かれるが、昼職代15ポンドと言う。
にらみつけ再び無言。沈黙はかなり怖いようだ。
入り口で二人が到着すると、わざとくさく店前で、太鼓や笛の演奏が始まる。
支配人らしき男が出てきて、ニッコリと運転手に妙。な目配せをする。
言葉は分からないが、何か礼を言っているようだ
ああこいつら、多分グルだなぁと思った。
 
食事が終わると運転手は、トイレに行くと言って暫く戻ってこない。
すると先ほどの支配人らしき男が、昼職代77ポンドを請求してきたのだ。
通常エジプトでは5-6ポンドで食事が取れるので、これは明らかに法外である。
「彼(ドライバー)が払うわよ」と私は吐き捨てる様に言い放った。
 
運転手が戻ると私はすかさず文句を言った。
「さっきの15ポンドってのとずいぶん話が違うじゃないのよ、これ二人分なんじゃないの?」
すると支配人は一人分と言う。
「判ったわ払うわよ、その代わり領収証ちょうだい」と言って財布を出した。
「ちょっとあんたも77ポンド払いなさいよ」と一緒に昼食をとった運転手を睨み付けた。
「いいえ、この方はいつも前もっていただいてますので」と支配人
「へー、そう」と私は嫌味っぽく言った。
「お嬢さん、嫌なら特別タダデ良いですよ、あなたは去年も来て下さったから」と意味ありげな
笑顔とウインク。
いったい何処の世界にただ タダ飯食わせるレストランがあるんだよ、
こいつらやっぱりグルだと私は思った。結局支払いはした。
 
レストランを出ると、運転手は第二の目的地サッカーラに向かおうと言ったが、
拝観料ももう無いので、帰ると私は言った。
拝観料は払ってやると、急に優しくなる運転手。私はきっぱり断る。
今朝、二人が会ったところ、代理店の前へ返せと私が言うと、彼は何度も
宿泊所まで送ると言った。明らかにうろたえている。
 
宿泊所まで来ると私は「今日あなたがした事が、合理的なのか、
代理店に説明してもらうわよ」と男を無理やり、店内に連れ込んだ。
店内の女性社員に、チャーターをコーディネイトした男かマネージャーに会わせろと言った。
二人とも休みと彼女。
まずは理由を説明しろと言われ、一部始終を丁寧に説明した。
しかし彼女は「あなたが了承して払ったんだし、彼は信用のある人よ、私たちに問題ないわ」と何か嫌悪感を覚える笑顔を見せた。
しかも慣れきった対応。
彼らに緊迫感は無く、女性も運転手と現地語で談笑している。
こいつらグルだと私は思った。
 
彼女じゃマネージャーに電話をつないだが、彼も何処と無く事情を判った感じで
「ランチ代だけは返すが、らくだ代は駄目だ」と強気だ。
ともかく、会って話そうと私は提案し、翌日アポイントメントを取って店を後にした。
 
今頃私から巻き上げた大金を山分けし、
馬鹿日本人をあざ笑い、いい思いをしているんかと思うと、
腸が見えくりかえりそうな夜だった。
 
その日、夜中にビールを買いに外に出ると、
(まあイスラム圏とはいえ、女性はあまり真似しないで下さい・・・)
ガキに胸を触られ、痴漢の多いエジプトへの怒りのボルテージは最高潮へ達したのだった・・・